薬物動態分析

薬物動態分析の概要

医薬品開発において、体内に投与された薬物がどのように体に取り込まれ、どのような過程を経て最終的に排泄されるのかを知ることは極めて重要です。
AMS法は試料中の14Cの個数を直接測定するので、LSC法のようなβ線の崩壊数を計測する方法に比べて約1,000倍高い感度を備えています。
AMSを使うことにより、これまでは測定不可能であった低放射能レベルでの薬物由来14C濃度測定が可能となりました。
当社ではAMSを用いた生体試料中の薬物由来14Cの定量法のバリデーションも確立し、動物やヒトの血漿、尿、糞中の薬物由来14C濃度の測定やHPLC分画試料の14C濃度測定を行っています。

活用分野

マスバランス試験

マスバランス試験とは、ヒトの体内における薬物の物質収支(投与された薬物が体内でどのように吸収され、代謝・排泄されるか)を把握する試験です。
この試験により、血中濃度(吸収)や組織分布、代謝・排泄に関する情報や未知の代謝物や排泄経路、残留性の有無の情報を得ることができます。
また、動物実験と比較することにより、種差の有無に関する情報を得ることができます。
さらに、薬物動態における遺伝多型の影響や薬物相互作用の影響を評価することも可能です。
ヒトに14C標識薬物を投与して試験を実施する場合、AMSで薬物由来14Cの定量を行うことにより、従来のLSC法で定量した場合に比べて投与放射能量を1/1000に低減させることが可能であり、内部被爆量を大幅に減じることができます。

<参考文献:ダウンロードできます>
野口英世(2003): 加速器質量分析(AMS)による14C標識薬物のヒトでのマスバランス試験 :828KB

宮岡貞次(2005):加速器質量分析(AMS)の医薬品開発への応用 ― 探索段階におけるヒトマスバランス試験 ― :928KB

山田一磨呂他(2005):開発初期におけるRI標識薬物を用いた薬物動態試験  :828KB

マイクロドージング試験

マイクロドージング試験とは、効率的な新医薬品開発を促進するために、超微量(予想薬効量の1/100以下、かつ100μg以下)の標識化合物をヒトに早期に投与して、ヒトにおいて最適な薬物動態を示す開発候補化合物を選択する試験です。
既にEUでは2003年7月より実施が許可されています。
この試験では投与放射能が非常に低いため、AMSのような定量感度の高い分析法が非常に有効です。

<参考文献:ダウンロードできます>
EMEA, Position Paper(2003): Single Microdose   :144KB

FDA Guidance (2006): Exploratory IND Studies  :220KB

HPLC代謝物プロファイルの測定

HPLC代謝物プロファイルの測定とは、AMSとHPLCなどを併用し、血漿や排泄物中の代謝物の分析をすることができます。

<参考文献:ダウンロードできます>
宮岡貞次(2005):加速器質量分析(AMS)の医薬品開発への応用 ― 探索段階におけるヒトマスバランス試験 ― :928KB

ラジオイムノアッセイ試験への応用

ラジオイムノアッセイ試験への応用とは、1 dpm(0.45pCi)以下の14C標識化合物を用いて、抗体-抗原の相互作用(結合性)を調査します。
AMSで分析することにより、微量の放射性化合物を用いても十分測定できることから、放射性物質による危険度を低減することができ、さらに規定濃度以下の放射性物質を取り扱うため放射性廃棄物も出ません。
<参考文献>
宮下正弘:加速器質量分析( AMS )のトレーサー研究での利用
-生化学分野における応用例-

Proc. Natl. Acad. Sci., Vol.97, No.6. 2445-2449 ( 2000 )
G. Shan et. al.,Isotope-labeled immunoassays without radiation waste( Livermore の文献です)

Tissue/Organ中の薬物14C濃度測定

Tissue/Organ中の薬物14C濃度測定とは、AMSは超微量の14Cの定量および微量分析が可能なことから、微量の14C標識化合物を動物に投与し、脳内の微小部位や特定の臓器などにおける化合物量や分布を調べることができます。

<参考文献>
Analytical Biochemistry 269, 348-352 (1999)
B. A. Buchholz et. al., “Intrinsic Erythrocyte Labeling and Attomole Pharmacokinetic Tracing of 14C-Labeled Folic Acid with Accelerator Mass Spectrometry”

Toxicology and Applied Pharmacology 159, 83-90 (1999)
C. Mani et. Al., “Species and Strain Comparison in the Macromolecular Binding of Extremely Low Doses of 14C Benzene in Rodents, Using Accelerator Mass Spectrometry

その他

蛋白結合率の測定(非常に結合率が高い場合の非結合率の測定が可能)
Receptor-Legand結合率の測定(微量放射能で測定が可能)

分析の流れ

薬物動態試験はGLPに準拠(信頼性基準)して実施します。

  1. 試験計画書の作成
    試験内容をご相談した上で試験計画書の作成を行ないます。
  2. 予備試験(オプション)
    バックグラウンドの測定、希釈法の検討、回収率の検討等を行ないます。
  3. 本試験
    試験計画書に従って試料調製・AMS測定を行います。
    全ての分析操作はSOPに従います。
  4. 解析
    前処理データおよびAMS測定データから薬物14C量の算出を行ないます。
    ご要望に応じて、結果速報を行ないます。
  5. QCチェック・QAU調査(オプション)
    生データおよび解析データのQCチェックを行ないます。
    ご要望に応じてQAUによる試験調査を実施します。
  6. 最終報告書の作成
    測定結果をまとめて報告書を提出します。

ご依頼について

測定をご希望されるお客様は、料金等お問い合わせフォームよりご連絡ください。
各種ご要望がありましたら、お電話(営業部:044-934-0020)または、お問い合わせフォームより
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料金について

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