試料中の炭素同位体比を AMS で測定するためには、酸化還元反応を経てグラファイトを作製します。
グラファイトを充填したカソードを AMS 測定用ホイールに装填し、 AMS 装置のイオン源に取り付けます。
セシウム陽イオン Cs+をグラファイト表面に照射することにより、炭素負イオン(12C–、13C–、14C–)が生成されます。
この時 CH–や CH2-などの分子イオンや14C の同重体である14N–も同時に生成されますが、14N–は不安定で直ちに中性化します。
生成された負イオンは電位差によりイオン源から引き出され、加速器のビームラインに導入されます。
質量数の異なるイオン(12C–、13C–、14C–)は逐次入射法(ジャンピングシステム)により決められた時間間隔(12C : 200μs 、13C : 1000μs 、14C : 0.1s )で加速管へと送り出されます。
加速管中央の電極にはペレットチェーンにより正の電荷が供給され、 +2.6MV (本宮 AMS では +0.46MV )に保たれています。
入射した負イオンはこの電極に引き付けられ加速されます。
この中央電極内にあるストリッパーキャナル(希薄なアルゴンガス層)をイオンが通過する際、分子イオン( CH–や CH2-など)は原子イオンに分解され、負イオンは電子を剥ぎ取られて陽イオンへと変換されます。
その後、陽イオンは中央電極の正の電荷と反発し、さらに加速されます。
このように、タンデム加速器ではイオンを二段階加速することにより、質量分析部だけでは不可分な同じ質量数の分子イオンなどの妨害成分を除去することができます。
炭素イオンは陽イオンへと変換される際、 +1 価から +6 価までのイオンが形成されますが、存在比の最も大きなイオン(白河 AMS では +3 価、本宮 AMS では +1 価)がビームラインの中心を通るように分析電磁石の磁場を調整します。
分析電磁石では、質量の軽い12C3+と13C3+(あるいは12C+と13C+)は大きく曲げられ、可動式ファラデーカップでそれぞれの電流値を測定します。
一方,14C3+(あるいは14C+)は Q レンズ(四重極電磁石)で集束された後、静電分析部で14C3+(あるいは14C+)以外の不純物イオンや散乱イオンが除去され、半導体(ガス)検出器で14C3+(あるいは14C+)の個数を計測します。
12C3+(あるいは12C+)の電流値と14C3+(あるいは14C+)の個数から14C/12C の同位体比を算出します。この同位体比を標準試料でnormalizeして pMC を算出します。