象牙全形牙の放射性炭素年代測定

背景と概要

象牙全形牙の個体等登録審査は2019年7月より厳格化されました。
環境省の報道発表(6月7日)によると、全形牙を規制適用日以前に適法に所有したという自己申告の裏付け証明について、「第三者の証言」のみでの登録を認めず、「第三者の証言」及び「第三者の証言を裏付ける補強(全形牙の放射性炭素年代測定法による年代測定結果等の客観的に証明できる書類)」を求める、とのことです。
そこで当社では、象牙全形牙の登録に必要な場合がある年代測定のサービスを実施しております。

ご依頼から測定結果の報告までの流れ

ステップ1:お客様による事前の確認(年代測定をご依頼いただく前に)

(1)環境省によるこの件に関する発表資料をご確認ください。
(2)自然環境研究センターによる象牙全形牙の登録全般に関する情報をご確認ください。

年代測定は、登録申請の手続きの一部に過ぎません。
必要ない場合もあるようなので、登録申請を行うお客様ご自身が関連する情報を十分得た上で、年代測定をご依頼ください。

ステップ2:お客様から当社へお問い合わせ

下記連絡先にお問い合わせください。
サービス内容について具体的に説明し、協議させていただきます。

<お問い合わせ先>
株式会社加速器分析研究所 白河分析センター(担当:早瀬)
TEL:0248-21-1055(代)  E-mail:office@iaa-ams.co.jp

協議の上で年代測定をご依頼いただく場合には、ステップ3以降に進みます。

ステップ3:象牙全形牙より年代測定に使う試料を採取

基本的にお客様に採取していただきますが、当社ではそれを支援するサービスをご用意しております。(必要な道具をまとめた「試料採取キット」の貸し出しなど)

象牙から試料を採取する部位など、登録審査において証拠の信頼性に影響すると思われる点がいくつかございますので、必ず事前に当社までご相談ください。

試料採取キット(一部)。
左から、測定試料(粉末)の採り方を詳しく解説したマニュアル、象牙から粉末を削り出すヤスリ、粉末をアルミホイル上に掻き取るヘラ、粉末を入れるガラス管とろうと(必要量採れたか確認もできます)。
他に使い捨て手袋、チャック付きポリ袋なども用意しております。

象牙をヤスリで削り、年代測定用の試料(粉末)を採取する様子

ご注意ください!
象牙全形牙の扱いには法的な規制があり、当社では分析用の試料(粉末など)のみお預かりします。 (全形牙は預かりません)

ステップ4:年代測定

当社分析センターにて放射性炭素年代測定を行い、測定結果をまとめます。

年代測定に使用する加速器質量分析装置(当社白河分析センター)

ステップ5:当社よりお客様に測定結果を報告

象牙試料の測定結果報告書を提出し、内容をご説明します

結果報告書(表紙など一部)

測定結果報告の後、お客様ご自身で、象牙全形牙の登録手続きを登録機関(自然環境研究センター)との間で進めていただくことになります。

当社は審査に関与しませんが、測定結果をお客様に説明し、ご質問にも随時対応いたします。

納期と価格

下表に示しました(表示価格に消費税が加わります)。
通常の納期で、象牙1本につき内側もしくは外側の一か所を測定する場合83,000円、
歯髄腔内側と外側の二か所で測定する場合は155,000円となります。  
通常の他に、短納期の場合(1ヶ月程度未満)、長納期の場合(6ヶ月以上)などのサービスをご用意しております。
数量による値引きもあります。詳細はご相談ください。  
なお、納期は測定用に採取された試料を当社がお預かりしてからの期間となります。

納期測定部位価格
1.5~2ヶ月(標準)内側もしくは外側の一か所¥91,300.-(消費税抜き¥83,000.-)
内側と外側の二か所¥170,500.-(消費税抜き¥155,000.-)
1ヶ月程度未満(特急)割増価格 ※詳細ご相談ください
6ヶ月以上割引価格 ※詳細ご相談ください

※上記料金は、試料採取キット貸出、コラーゲン抽出作業、放射性炭素年代測定、報告書作成料金を含みます。
これに消費税が加わります。
※当社スタッフが試料採取に伺う場合は、技術料・出張費が別途発生いたします。
※当社業務の繁忙具合によって、納期が変動いたします。その都度ご確認ください。
※この価格は象牙の年代測定のために設定されたもので、他の試料の価格については、「業務内容」→「放射性炭素年代測定」をご覧ください。

各ステップ詳細説明

<ステップ1(ご依頼前の確認)に関する説明>

(1)環境省によるこの件に関する発表資料をご確認ください。
環境省によると、2019年7月より、「種の保存法」に基づく象牙全形牙の個体等登録審査において、その全形牙を規制適用日以前に適法に所有したという自己申告の裏付け証明として、「第三者の証言」のみでの登録を認めず、「第三者の証言」及び「第三者の証言を裏付ける補強(全形牙の放射性炭素年代測定法による年代測定結果等の客観的に証明できる書類)」を求める、ということです。
環境省による本件に関する報道発表の内容は、下記の環境省ホームページにて確認できます。
この報道発表では、象牙全形牙の登録希望者向けに作成された資料も公表されています。
登録申請者および年代測定機関は、この内容に従って対応する必要があるため、お客様も必ずご確認ください。

・環境省報道発表(2019年6月7日)
「全形を保持した象牙の登録審査方法の厳格化に係る運用について」
https://www.env.go.jp/press/106849.html

・登録申請者向けの資料
「象牙全形牙の登録のため、放射性炭素年代測定をされる登録希望者のみなさまへ」
https://www.env.go.jp/press/files/jp/111766.pdf

(2)自然環境研究センターによる象牙全形牙の登録全般に関する情報をご確認ください。
象牙全形牙の登録は、一般財団法人自然環境研究センターが行います。
登録全般について同センターに確認した上で年代測定をご検討ください。
象牙全形牙の登録に当たっては、様々な確認事項があり、またすべての場合に年代測定が
必要とされるわけではないようです。
同センターでは登録申請書提出前に下記宛に問い合わせるよう求めています。
当社に年代測定をご依頼になる前に、お客様ご自身で自然環境研究センターに問い合わせ、十分な情報を得てください。

・問い合わせ先
一般財団法人 自然環境研究センター 国際希少種管理事業部
〒130-8606 東京都墨田区江東橋3丁目3番7号
電話番号:03-6659-6018

・一般財団法人自然環境研究センターの象牙全形牙登録に関するホームページ
http://www.jwrc.or.jp/service/cites/regist/kikan/1.htm

<ステップ3(年代測定に使う試料を採取)に関する説明>

(1)試料採取の支援
年代測定を行うためには、象牙から少量の試料を採取する必要があります。
一部切り取る、表面などを削って粉末を採取する、などいくつかの取り方が考えられ、象牙の形状や、部位の状態などにより適切な方法は変わります。
また、象牙の年代(ゾウが死んだ年代)を測定するために適した部位があります(不適切な部位では、登録申請で参考にされる証拠にならなくなる可能性があります)。
このため、試料採取を行う前に、当社にご相談ください。
採取する部位や、必要な試料量などについてアドバイスをさせていただきます。
試料採取に使える道具を1式そろえた「試料採取キット」(作業手順を説明した冊子付き)の貸し出しも行います。
試料採取をご自身で行うことが困難な場合、当社社員が代行することも検討いたしますので、ご相談ください(ただし、その場合は試料採取費などを別途いただくことになります)。
なお、粉末などを採取してできる傷は元に戻せませんので、その点もご注意ください。

(2)試料を採取する部位について
試料を採取する部位についても、環境省による登録希望者向けの資料(ステップ1の説明参照)の中に書かれているので、その内容を確認してください。
環境省の資料では、全形牙の歯髄腔(内部の空洞)の内側壁面から試料を採取すること、それができない場合は根元付近から採取することを求めています。
さらに、歯髄腔の内側の試料を測定しただけでは登録できない場合でも、追加で外側の1ヶ所から採取して測定すれば、より正確に年代を測定でき、登録できる可能性があるとしています。
試料を採取する部位と点数は、年代測定の結果に加え、作業の手間や所要時間、費用にも関わる重要なことです。

(3)ご注意いただきたいこと:象牙の取り扱いについて
象牙全形牙の取り扱いには法的な規制があり、未登録の全形牙を他人に預ける行為は、種の保存法に違反します。
このため、当社では分析用に採取された試料(粉末など)のみをお預かりし、全形牙は預かりません。
全形牙は郵送することもできません。
さらに、一度お預かりした分析用試料は、分析後も当社で保管または廃棄することになり、お客様に返却することはできません。法令に違反すれば、懲役や罰金などの処置を受ける可能性があります。
このため、象牙全形牙からの試料の採取や、採取した試料の受け渡しなどについては、お客様と当社の間でよく協議し、双方間違いのないように行う必要があります。
不明な点があれば、環境省や自然環境研究センターに問い合わせるなどの対応をいたします。

<ステップ4(年代測定)に関する説明>

(1)放射性炭素年代測定とは
大気中にはおよそ一定の割合で放射性炭素(14C)が存在し、生物は光合成や摂食を通じてこれを取り込むため、大気とほぼ同じ割合の放射性炭素を体内に持っています。
放射性炭素は、一定のペースで減少(5,730年で半減)する性質を持っているので、生物が死ぬと体内の放射性炭素の割合は時間の経過とともに減少します。
放射性炭素年代測定法は、この性質を利用して、その生物が何年前に死んだのかを分析する方法です。

(2)象牙の放射性炭素年代測定
象牙に含まれるコラーゲンという成分を抽出し、分析装置で測定、放射性炭素の割合から年代を算出します。

(3)象牙の年代測定結果の例
下のグラフの例では、ゾウが死んだ年代は1950年代(1956~1957年)と2000年代(2007~2011年)の可能性があります。
1950年代は規制開始前、2000年代は規制開始後です。
このような場合、同じ象牙からもう1ヶ所測定することで、1950年代か2000年代か判断できる可能性があります(測定結果報告書に同様のグラフが掲載されます)。
測定結果報告書は、専門的な内容となっております。お客様が必要とされる範囲で、
できるだけご理解いただけるように説明し、ご質問にも対応いたします。

※グラフの見方
グラフの縦軸は放射性炭素の存在割合を表すF14C、横軸は年代(西暦)を示します。
青い波線は過去の各年のF14Cを示し、縦軸から横に伸びた赤い突起が測定した試料のF14Cの水準ですので、この水準と青い波線の交点の年代が推定年代となります。

<ステップ5(測定結果を報告)に関する説明>


測定結果報告書
当社での作業内容(化学処理、測定、年代の算出)、測定結果などを記述した報告書を作成します。
内容は環境省の定めに従います。
作成した報告書をお客様にお送りし、内容について説明いたします。
報告書の表紙にはお客様のお名前を記します。
また、象牙全形牙の全体が写った写真をご提供いただければ、 報告書末尾に掲載いたします。
報告書は紙に印刷したもの1部を提出いたします。
なお、当社では測定結果(測定した試料の推定年代)について説明いたしますが、その測定結果によって登録可能かどうかの判断は自然環境研究センターによって行われます。
したがって、当社から提出する報告書には、登録可能かどうかなどの判断は記載されませんので、その点あらかじめご承知おきください。